トポロジカル物質創製プロジェクト
大局的空間トポロジーを持つ新物質を創製し、幾何学的位相が織り成す新現象の発見を目指します。私達は、これまでの研究において、巨視的量子秩序（電荷密度波：CDW）を示すNbSe3のリング・メビウス・８の字結晶などのトポロジー物質を創製してきました。これらを新たに数学の可展面理論を援用することによって新しいトポロジカル結晶学・結晶成長学を構築するとともに、そのCDW物性を通じ、巨視的量子秩序とトポロジーの関係を明らかにします。また、5回対称性をもつ準結晶の物性を通じ「対称性とトポロジー」の関係を理解します。さらに、大局的空間トポロジーに関連して、銅酸化物高温超伝導体や重い電子系物質のリングを作製し、これらのトポロジー物質における電子波の干渉実験も行います。
NbSe3のリング・メビウス・8の字結晶．
Tanda et al., Nature 417 (2002) 397.
本プロジェクトでは、超伝導体や液晶などの種々の物質に見られるトポロジカル欠陥の性質から系の大局的な性質を解明することも目指しています。私達は、銅酸化物高温超伝導体La2-xSrxCuO4の磁束線（典型的なトポロジカル欠陥）格子に関して新しいトポロジカル欠陥秩序を観測し、その特徴が高温超伝導秩序変数の空間対称性と合致することを見出しました。これは、系に導入された局所的トポロジカル欠陥がその系の大局的性質と密接に関係することを示す良い例の1つと言えます。トポロジカル欠陥の観点から高温超伝導の研究を行います。また、超伝導秩序変数のトポロジーと量子輸送現象に関してもトポロジーを切り口とした興味深いテーマとして研究しています。
さらに、トポロジー新技術開発プロジェクトと連携して、トポロジカル・デバイスの開発も試みます。
La2-xSrxCuO4の中性子回折実験で観測された磁束線四角格子−ｄ波対称の超伝導秩序と合致−
Gilardi et al., PRL 88 (2002) 217003（スイスPSIとの共同研究）.
